生前贈与とは

生前贈与とは、文字通り、被相続人が死亡する前に、自分の財産を人に分け与えてしまう行為です。自分の財産を、生前に贈与することによって、将来負担すべき相続税を少しでもおさえるために利用されている制度です。

メリット

・贈与による対策は贈与のあった年の税法により課税され、将来の税制改正等によるリスクを回避できます。

・現金の贈与の場合には、実行コストがあまりかかりません。

・ご自身でできることが多く、コストがほとんどかからず、大きな節税効果が見込めるため、相続税対策の基本となる方法です。

・相続税のような2割加算がないため、孫などへの世代飛ばし贈与をおこなうことにより、次世代の相続税対策も同時に行うことができます。

デメリット

贈与税の税率が、相続税よりも高く設定されているため、生前贈与を行う際には、自身の財産状況をしっかりと把握しうまく活用しなければ、かえって、税金が高くついてしまう恐れがあります。

生前贈与を使った相続税対策案の例

・相続税と贈与税の税率の違いを利用した贈与:

相続税と贈与税はともに最高50%までの超過累進税率です。贈与は本人が贈与額を自由に決定できるため、遺産総額に対する税率より低い税率での贈与を行うことで相続税・贈与税トータルの金額が少なくすみます。

例えば、5億円の遺産がある場合に300万円の贈与をした場合には、相続税は課税価格が3億円を超える部分に対しては50%の税率ですので、この300万円に対して150万円の相続税がかかっていたはずが、19万円の贈与税ですみ、131万円の節税につながります。

また、贈与税は暦年課税であるため、複数年にわたって贈与を行うことでより大きな節税効果が期待されます。

ただし、毎年定額の贈与を行っていた場合、例えば毎年100万円の定額を10年間贈与した場合には、最初の年に1000万円贈与をした(10年間毎年100万円贈与を受ける権利を受贈した)とみなされる場合があるため、毎年贈与の時期をずらす、金額を変える、贈与するものを変える、申告・契約書等により証拠を残す等の対応が必要となります。

 

・居住用不動産等の配偶者への贈与:

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

この特例を利用した応用テクニックの一例としては、その自宅を将来売却するような場合には、居住用不動産の建物と土地の持分を譲渡することで、居住用財産を譲渡した場合の所得税の3000万円の特別控除を夫・妻の両者で使うことなどが考えられます。 

 

・住宅取得資金の贈与:

住宅取得資金の贈与を受けたものは平成24年は1000万円、平成25年は700万円、平成26年は500万円まで非課税(省エネ住宅は+500万円)となります。また、適用条件として、床面積50㎡以上、贈与を受ける側は20歳以上で、合計所得2000万円以下等があります。

 

生前贈与は、対象となるものが広範囲にわたり、上記のほかにも様々な相続対策案が考えられますが、相続税対策を行う上で最も利用され、相続対策の基本となるものだといえます。

 

生前贈与のポイント

・複数人に何年にも分けて贈与する

・贈与税以外の諸費用を含めて有利判定する

・相続税評価額を引き下げてから贈与を行う

・将来値上がりが見込まれる資産は優先して贈与する

・3年以内加算は相続によって財産を取得した相続人に限られるため、相続時期直前は子供の配偶者や孫に贈与を行う

・遺留分を考えて贈与する

・確定日付の取得・贈与契約書の作成・贈与税申告書の提出などできちんと証拠を残す

などが挙げられます。

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